Quality and performanceフライアッシュの品質と性能
フライアッシュの種類別品質と性能
フライアッシュは、その化学的・物理的性質を活かし、多くの分野で使用されています。
コンクリートの混和材として用いるフライアッシュは、利用目的に応じ4種類の品質がJISに規定されています。
また、現在の石炭火力発電所では、ほとんどが海外炭であり、多くの種類の石炭が使用されていますが、適正な燃焼技術と品質管理により良質なフライアッシュを生産しています。
石炭火力発電所の信頼性の高い機械設備と適正な燃焼管理により、品質の安定した石炭灰が生産されます。
1.コンクリート用フライアッシュの品質規定(JIS A6201-2015)
項目 | フライアッシュⅠ種 | フライアッシュⅡ種 | フライアッシュⅢ種 | フライアッシュⅣ種 | |
---|---|---|---|---|---|
二酸化けい素 % | 45.0以上 | ||||
湿分 % | 1.0以下 | ||||
強熱減量(1) % | 3.0以下 | 5.0以下 | 8.0以下 | 5.0以下 | |
密度 g/m³ | 1.95以上 | ||||
粉末度(2) | 45μmふるい残分 (綱ふるい方法)(3) % |
10以下 | 40以下 | 40以下 | 70以下 |
比表面積 (ブレーン方法)cm²/g |
5000以上 | 2500以上 | 2500以上 | 1500以上 | |
フロー値比 % | 105以上 | 95以上 | 85以上 | 75以上 | |
活性度指数 % | 材齢28日 | 90以上 | 80以上 | 80以上 | 60以上 |
材齢91日 | 100以上 | 90以上 | 90以上 | 70以上 |
注
- (1)強熱減量に代えて、未熱炭素含有率の測定をJISM8819又はJISR1603に規定する方法で行い、その結果に対し強熱減量規定値を適用してもよい。
- (2)粉末度は、綱ふるい方法又はブレーン方法による。
- (3)粉末度を綱ふるい方法による場合は、ブレーン方法による比表面積の試験結果を参考値として併記する。
コンクリート用フライアッシュの性能・用途等
フライアッシュⅠ種
混入することにより、特にコンクリートの高強度、流動性付与、アルカリシリカ反応抑制等に効果があるもの。
また、初期強度発現性も無混入の場合と遜色ないもの。
フライアッシュⅡ種
標準的なフライアッシュで、混入することにより、特にコンクリートの水和発熱抑制、長期強度の改善効果があるもの。また、コンクリートへの流動性付与、アルカリシリカ反応抑制について、無混入の場合と比較して十分に効果が発揮されるもの。
フライアッシュⅢ種
混入することにより、特にコンクリートの水和発熱抑制、アルカリシリカ反応抑制、長期強度の改善に、Ⅱ種と同等の効果があるもの。ただし、練り混ぜ時に、コンクリートの流動性、空気連行性に関して配慮が必要である。
フライアッシュⅣ種
水和発熱抑制に対しⅡ種と同等の効果があり、アルカリシリカ反応抑制も期待できるもの。強度発現の点で低強度コンクリート、工場製品等に使用可能のもので、鉄筋コンクリート用の普通コンクリートに適用する場合には、事前に強度発現を確認して使用するもの。
※フライアッシュの種類によっては生産できる地域が限られることがあります。
Characterフライアッシュの化学・物理的性質
化学的性質
フ石炭火力発電所では、微粉砕した石炭をボイラ内で燃焼させ、電気集塵器に捕集された石炭灰をフライアッシュといいます。
フライアッシュの主成分がシリカとアルミナなので、セメントに混合すると、セメントの水和の際に生成される水酸化カルシウムと反応(ポゾラン反応と呼ばれている)して、耐久性と水密性を向上させる働きをします。
フライアッシュの化学組成例(%)
SiO2 | Al2O3 | Fe2O3 | MgO | CaO | |
---|---|---|---|---|---|
フライアッシュ | 40.1~74.4 | 15.7~35.2 | 1.4~17.5 | 0.2~7.4 | 0.3~10.1 |
出典:石炭灰ハンドブック
セメントの水和反応
出典:セメント協会「セメントの常識」
ポゾラン反応
フライアッシュを、コンクリートの混和材として使用した場合、ガラス状のシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)がセメントの水和によって生成される水酸化カルシウム[Ca(OH)2]と徐々に反応して、カルシウムシリケート水和物等を生成します。この反応はポゾラン反応と呼ばれ、生成された水和物はセメントの水和生成物と類似した化合物となり、コンクリートの耐久性や水密性を高めます。こうした一連の反応は次のように表せます。
物理的性質
フライアッシュ電子顕微鏡写真
(2,000倍)
フライアッシュは微細粒子であり、これを電子顕微鏡でみると球形をしています。
このため、フライアッシュを用いると、コンクリートやモルタルの施工時の流動性が増大するので、この性質を活用して土木・建築分野で利用されています。
Featuresフライアッシュコンクリートの特長
コンクリートにフライアッシュを使用すると、「長期強度の増進」「乾燥収縮や水和熱等の減少」「水密性の向上」等、多くの有利性を発揮します。
フライアッシュを使用したコンクリートの特長について、標準的な品質のⅡ種を例に示すと次のとおりです。
長期強度の増進
セメントにフライアッシュを混合した場合、ポゾラン反応が長期間継続するため、セメントだけの場合よりも長期強度が増進し、耐久性に富んだ構造物ができます。
また、養生温度を少し高くした場合の強度は、フライアッシュを用いると著しく増進し、ポゾラン特有の効果がより発揮されます。したがってセメントの使用量の節減をはかることができます。
乾燥収縮の減少
フライアッシュを混和したコンクリートまたはモルタルは、フライアッシュの代替率が増加する程セメント量の減少により、硬化後の収縮率が小さくなり、ひび割れ現象が起こりにくく堅牢な構造物となり、また建物の上塗用としてもその特長を発揮します。
アルカリシリカ反応の抑制
フライアッシュのアルカリシリカ反応抑制効果は古くから知られていましたが、独立行政法人土木研究所、(財)土木研究センター、(財)電力中央研究所および日本フライアッシュ協会の共同研究で、フライアッシュの使用によるアルカリシリカ反応の抑制が証明されました。 さらにレディーミクストコンクリートの規格JISA5308にもアルカリシリカ反応抑制対策として、フライアッシュセメントB種若しくはC種の使用が採用されています。ただし、B種ではフライアッシュの分量(質量%)が15%以上と規定されています。これにより、わが国の骨材需要からみて、フライアッシュは、有効な混和材としての役割を果たしています。
アルカリシリカ反応
骨材のある種の反応性シリカ鉱物が、セメント中のアルカリ成分と反応して骨材表面にけい酸ソーダを生成し、周囲から水分を吸収して膨張し、骨材周辺のセメントペーストに浸透圧による水圧を与えて、ひび割れが発生する現象です。
フライアッシュは、このけい酸ソーダの生成反応(アルカリシリカ反応)を抑制する性質があります。
水和熱の減少
セメントにフライアッシュを混合すると、コンクリートの水和熱が減少します。温度上昇は代替率が増加するほど減少するので、マスコンクリート工事、特にダム工事や原子炉格納容器等には極めて有効です。
マスコンクリートの場合は、フライアッシュを用いないものに比べ、7日材令で6℃程度温度上昇が少なくなります。
水密性の向上
セメントにフライアッシュを混合すると、セメント中の遊離石灰とフライアッシュのシリカやアルミナとが結合して、不溶性の固い物質を作り、コンクリートの組織を緻密にして、その水密性を増し日時の経過とともに著しく効果を発揮するので、地中工事を始めあらゆる接水工事に有効です。
化学抵抗性の向上
セメントにフライアッシュを混合すると、ポゾラン反応の際に生成されるけい酸カルシウム水和物が組織を緻密にするとともに、反応によって遊離した不安定な水酸化カルシウムがフライアッシュの成分と結合するので、硫酸塩、海水、薬液等に対して顕著な効果を発揮します。
ワーカビリティーの向上および単位水量の減少
フライアッシュは微細な球形をしているため、これを混和すると流動性が著しく改善されるので、コンクリートの打設が効率的に行われ、填隙性がよくなり、仕上り面が滑らかで美しくなります。プレパクトコンクリート工法には不可欠とされる理由もここにあります。また同一スランプを得るための所要水量は、フライアッシュの代替率に比例して減少します。
最近はコンクリート構造物の高性能化に伴い、この性質を利用して高流動コンクリートなどにも用いられています。
ワーカビリティー
まだ固まらないモルタルやコンクリートの、おもに作業性の程度をいいます。「ワーカブルなコンクリート」とは、作業性のためにほどよい軟らかさをもち、しかも材料分離しにくいコンクリートのことをいいます。